樹木医 佐々木様のFacebook記事より転記

【シェア大歓迎】新座から千葉へ、大移動

★★クラウドファンディングへのご協力のお願い★★

さる8月末に、樹齢60年以上のソメイヨシノの大木を埼玉県新座市から千葉県千葉市の緑区の知的障害者支援施設に移植する工事をコーディネートしました。幹回り280cm、樹高は8m近くある大木で枯らさないために万全を期したため、非常に費用が嵩みました。移植を決断してくださったオーナーさんが事後ではありますが、クラウドファンディングに挑戦されていますので、この後のストーリーを読んで(長いです)「よっしゃ応援したろ」と思われたら、ぜひぜひよろしくお願いします。寄付は難しくともシェアいただけるだけでもありがたいです。幸い、移植は成功裏に終わり桜は元気に過ごしています!

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始まりは、昨年の5月でした。ガーデナー仲間の西尾さんから樹木医さんを探しているとご相談があり、「元気かどうか診てほしい」とのご依頼を、桜のオーナー(の娘さんご夫婦)の木村さんよりいただきました。「元気がないならまだしも、元気かどうかとはなんでだろう??」と思いながら現場にお邪魔すると、伸びやかに枝を伸ばした見事なソメイヨシノがそこに立っていました。もちろん、真面目に外観診断をしたわけですが、結論は見た瞬間に出ていました。元気じゃん!!!しかも、ぴっちぴちのぷりっぷりに元気じゃん! 多少、腐朽はありましたが枝ぶり、枝数、主な枝の艶やかさは60年から70年選手とは思えないほどでした。肥沃な土壌と家に守られた立地がいじけない大らかで元気な木に育てたのだろうと推測します。

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さて、ご依頼いただいた木村夫妻の願いはこの木を生き延びさせる事。じつは、諸般の事情によりこの桜は切られるかもしれない運命にありました。新たな宅地開発に際してどうしても邪魔なのだそうです。オーナーであるお父様の決意は固く「元気いっぱいなので危険のために切る必要はないですよ」と申し上げましたが、1年あまりの検討の結果、やはり伐採しようという結論になってしまいました。

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僕が不動産業者だったら、この雄大な桜を残して、坪単価を高めて売るのに!!!とホゾを噛みましたが、全員がその価値観に立つことはできず。。無念でした。樹木医として説得材料はいろいろ出しましたし、倒伏の懸念を払拭するために剪定もしてもらいました。実は、この桜、このご家族の持ち物には違いないのですが、これだけの大木となるともはやご近所のみなさんを見守り見守られ、みなさんの思い出に根付いた社会的な存在になっています。これを切ることは、そのご近所のみなさんの思い出も失われることになってしまいます。あとは、調査の日ちょうどオナガが木にとまって鳴いていました。そう、大木は生き物の拠り所にもなるのです。大きな木はそれだけで生態系を生み出す力があります。これは、私有地のプライベートな出来事のようですが、実はそうではないんです。こうした伐採の積み重ねが都市部の自然を長い時間をかけて毀損していくことになります。

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とはいえ、伐採が決まった以上、指を咥えて見ているわけにもいきません。いろいろ検討の結果、移植の経験が豊富で、大きな植木も日々扱っている小島樹木医に全面的にお願いして移植を敢行することになりました。不動産業者が切った期限は8月末。ど、どしぇーーー! はい、根回しもできないのもさることながら、もっともダメージの大きな真夏・・・考えられる得るなかでもっともハイリスクなタイミングでした。しかし、ここを逃せば伐採の運命が待っていました。費用のお見積もりをして木村ご夫妻に判断を委ねました。枯らさないために丁寧な養生、丁寧な施工を織り込むと費用は大きく膨らみましたが・・・ご夫妻が出した結論は「GO」でした。実を言うと、結論を伺った時ちょっと泣きました。造園の仕事してますと、樹木医であっても木をそこそこ殺して殺して殺しまくってるんです。勝手に生えてきた実生を抜いたりして。それなのに、一本の木に涙するって我ながら身勝手だとは思うのですが、実は樹木医の本分は、もちろん木そのものと向き合うことでもありますが、木を愛する人と向き合うことだなと常々思っています。1年、手を尽くして悩んで悩み尽くして助けられない苦しさを越えて出した「移植する」という結論、覚悟にもう何も言うことはないと思いました。僕のできることは限られていますが(ほんとに何にもないんです(爆)、ベストを尽くそうと思いました。もちろん、枯れるかもしれない保証はできないということはお伝えしています。

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さて、問題は移植先でした。前後しますが、伐採の可能性が持ち上がったタイミングで新座市内はじめ、和光市や近隣で移植先を打診しましたが、このサイズ・樹齢・ましてや枯れるかもしれないリスクを引き受けてくれるところはありませんでした。仕方がないので、範囲を広げようと思った時に2箇所候補地が浮上しました。一つは鴨川市の宿泊施設・天然村さんでしたが、これは搬入が困難で断念。もう一つが、移植することになった千葉市緑区高田町にある知的障害者支援施設「しいのみ園」の敷地でした。実は、しいのみ園を運営する社会福祉法人心友会の理事を勤められている福谷さんとは旧知の仲(気がつけば、もう15年くらい!?)。以前、園の入所者のみなさんの憩いの場所として理事長さんが林を買ったから見にきてとのことでお邪魔したことがあったのをピーンと思い出しました。「あそこは、広いぞ」おそるおそるメッセージで打診したところ「あ、いいですよー」くらいのノリで即答が。思わず電話しました。「枯れるかもしれませんよ」でも福谷さんの答えは「わたしたちは重度の障害のあるみなさんを預かっています。それが私たちの使命なんです。彼らの憩う場に、こんな桜があったら素敵だなとわたしも理事長も思ったのでOKです。きちんとお世話もしていけますし」みたいなことを(正確じゃないけど大意はこんな感じ)おっしゃり、まだ結論が出てない事も受け入れてくださいました。なんだろう、このマイナスの意味でない受け身の尊さは。「受け止めるんだよ」っていう優しさに、これまたちょっとだけ涙。涙腺が弱いのは、トシのせいだけじゃないんだぜ。

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そして、大事な桜を預けることができるか、受け取ることができるか、お見合いの日もセッティングしました。とんでもない豪雨でしたが、千葉までご夫妻は来てくださり、お互いの思いの丈を伝え合いました。いい出会いになった。バトンは手渡されたと感じました。そして、小島樹木医とその素晴らしいチームのみなさんの獅子奮迅のお働きで桜の巨体は16tと25tのラフタークレーンを駆使して釣り上げられ、無事にしいのみ園に植えられました。

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しいのみ園に入所しているみなさんには重度の知的障害があり、彼ら自身とスタッフのみなさんのケアがとても大事です。園の周りの樹林地は手付かずで未活用でした。そこに、散策路やベンチをつくり、森を楽しむ整備がずっと続けられています。障害のある人も、街中でごく普通に行き来できる社会が理想です。けれども、社会は銃弾飛び交う弾幕の中を進んでいるような厳しい場所となっているのが残念ながら現実です。荒海たる社会と、陸地のような施設の間の「なぎさ」に森があり、そしてこの桜がシンボルとして立つことで障害のあるみなさんが内に閉じこもることなくかといって剥き出しで弾幕の中を進むことのない環境を作っていけると確信しています。この桜には、彼らを守る(象徴的な意味でなく本当に)力があります。どうかこの桜を生かすことに、暖かい支援を賜われたら幸いです。こちらのページから、ぜひぜひクラウドファンディングよろしくお願いします! 木村さんのお作りになる自然な素材を生かしたおいしいお菓子が返礼品ですよ♪

移植元 オーガニックmaman https://www.organicmaman.jp

移植先 しいのみ園 https://shinyuukai.jp

【クラウドファンディングはこちら!】

https://readyfor.jp/projects/sakura3488